4.揺れる想い

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「小池くんのこと、残念だったね」  私は小池くんの裏事情を冷静に考察しながらも、話を合わせた。 「柳田さんは、どうだったんですか?」  確か、この人は小池くんとは仲が悪かったはず。学校の行きがけに殴られるくらいだから、間違いないはずなんだけど。 「僕は…、小池さんとは昔からの知り合いだったから、大学で声を掛けられて、それで入部しただけです」  彼は私の顔を見ても、全く反応がない。  完全に忘れちゃってるんだ、私のこと。  まぁ、そうだよね。彼は龍人嫌いだし。  石嶺さんも上級の龍人だけど、彼女は違うんだな。同じ志を持った仲だから。  何かしら、龍人たちに怨みや嫌悪感を持った人たちって、けっこう多い。それを集団として機能させ、マスコミやSNSを利用して大きく啓発する。そして世論に訴える。  彼は命を賭けてそれをした。私は彼を好きじゃなかったけど、やったことは認めざるを得ない。  現にこうして、後を継ぐ人たちまで現れてるんだもん。彼の今まで培ってきた人望そのものの結果だと思う。
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