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今日から俺は!
キミに初めて会ったのは、市内の大きなショッピングモールのなかにある小さなお店の中だったね。
アナタは、まるで誰かを探しているかの様に、店内を歩き回っていた。そして偶然俺と目が合ったんだ。
キミはキラキラした瞳で俺を見つめると、いきなり話しかけてきた。あの時はビックリしちまったぜ。
「ねえ。あなた新しく入ってきたの? どこから来たのかしら?」
俺は眩しいキミの瞳に一目惚れしちまって、持っていた数字の入った名刺を見せた。
「あら。中国から来た新人さんね。なんてお洒落な格好してるのかしら。凄く素敵だわ。」
って、いきなりキミは俺の両手を握ると自分の顔の近くまで、俺の顔をじっくりと見てきたんだ。
「エッ!マジ?こんな綺麗な若い女の子にいきなり声かけられて、キスされそう!
俺はどうしたらいいんだろう。」
ドギマギしながら困っていると、たまりかねたのか、店長が奥から出てきた。
「お客様、大変申し訳ございません。今日入ったばかりでしたので、失礼いたしました。」
そうだよ。俺は今日はるばる中国から日本に来たばかりなんだ。まだ周りの雰囲気にも慣れていないし、店先にも立っていないんだぜ。
俺はキミに話そうとしたが、それを遮るかの様に店長に向かってキミは凄いことを言った。
「いいわ。私、気に入った。一緒に連れて帰りますから手続きをお願い。」
店長は、俺を見ながら仕方ないといった顔でキミを店の奥に連れていくと、何やら話をしながら2人で俺の方へ向かってきた。
そしていきなり店長が、俺を白い布で覆いかぶせた。
「なにをするんだ!店長。前が見えないじゃないか。」
店長に叫ぶより前に彼は、イキナリ俺を狭い真っ暗な部屋に閉じ込めた。俺は身動きも取れず、口には、紙屑の様な丸いものを押し付けられ、喋ることも出来ない。そうしているうちに俺は気を失った。
しばらくして、ガサガサと部屋の外から音が聞こえる。さっきの若いお嬢さんだ。俺を助けに来てくれたんだ!
俺は彼女の目を見つめると、キミも嬉しそうな顔で俺を見つめ返した。そして俺の鼻先に優しくキスをした。
「やっと会えたね。会いたかったわ。」
「オレもさ。キミの名前まだ聞いてなかったね。オレの名前は…。」
俺が話し掛けようとした瞬間、俺の口の中に、いきなりキミは右足のつま先をいれてきた!
「うぐっ!気持ちええけど、いきなり何をするんや。俺は、もっとキミの事を知りたいねん。」
すると、キミは笑いながら鏡の前で俺の口に入れた右足を見て、こう言った。
「やっぱ、可愛い!この新商品のハイヒール!」
俺は、固まってしまった。
「エッ⁉️俺、ハイヒールなの?」
鏡に映った自分を見て、俺は更に固まってしまった。
「何でハイヒールになったんだろう?」
いくら考えてもわからない。今日から俺はハイヒールとして生きていかなければならないのだ。
読者の皆さん、誰かのハイヒールが俺なんだよ!
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