それでもピエロは生きている。

7/13
前へ
/13ページ
次へ
 *** 『ケイスケさん。  あなたは、少々私を舐めていませんか。いえ、それとも本当に何も知らないのでしょうか。  私はただの、れみこさんの友人ではありません。れみこさんのことは、小学生の時から知っています。何故なら幼馴染なんですから。  ずっと黙っていましたけれど、私は最初かられみこさんの正体がわかっています。だって、小学生の時からいつも一生懸命ノートに小説を書いていることを見ていたのですから。  そして、いつかプロになりたいとずっと願っていたことも。  贔屓目だと思われないために、私は正体を隠して読み専としてスターライツに登録しました。そして、れみこさんのことを応援し続ける第一読者として、ずっと背中を押し続けてきました。  貴方が大学の講義の合間にも、頑張って小説を書き続けていたことを知っていましたよ。だって同じ大学で同じ学部ですもの。一緒に同じ学校に行こうね、と約束しましたね。私は現実でもネットの世界でも、貴方のことをずっと応援し続けてきました。  だから知ってるんです。  貴方が二重人格などではないこと。  本当に解離性同一障害で悩んでいる人もいますが、貴方はそうじゃない。  そして、ケイスケさんと名乗る貴方が、れみこが初めて完結させた小説のヒーローの名前であること。そして、その人格を演じていることを。  貴方が、嫉妬から卑怯な手を使って人を叩いて傷つけた事実は変わりません。それが思いのほか炎上して、自分が特定されて矛先がこちらに向いて、きっと大いに焦ったことでしょう。もう叩かれたくないと思ったことでしょう。  でもそれは、貴方が相手にしたことがそのまま返ってきただけのこと。貴方はそれを因果応報としてきちんと受け止め、贖罪しなければいけません。それが、どれほど辛いことだとしても。  それなのに、よりにもよって別人格を作ったフリをして“ここまで追い詰められているんだから許してやってほしい”なんて、ムシが良すぎると思いませんか。  れみこさんがやってしまったことは、れみこさんが自分でケリをつけなければいけません。  炎上が収まってほしいと思うかもしれません。もう叱られたくないかもしれません。そして、「不相応の作品がランキングトップにいてコミカライズしたんだから嫉妬しても当然だ」と自分を正当化したい気持ちがあるのもわかります。  でもね。  別人格とやらに庇われながら、直接誰かに謝罪を伝える勇気もない。自分で宣言した通りの退会という責任の取り方も結局できない。  それで、一体誰にどうして謝罪が伝わると思いますか。  だから、れみこさんを呼びなさい。  どんなに糾弾されても、自分がやったことときちんと向き合いなさい。  そうやって逃げ続けるばかりの人間が何故、自分の作品と、そこで描かれる人の心と向き合えると思うのですか』
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加