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──深夜のコンビニ前。
駐車場にはベンツ、ベージュの軽自動車、自転車が停まっている。
そこへ黒いミニバンが入ってきた。
「あったあった、組長の車」
「ったく、三丁目ってどこの三丁目だよって感じ」
根元の染まっていない金髪の若い男女が降車する。
男は女をたしなめるように言った。
「組長の前では生意気な口きくなよ。女にも手加減しない人だ」
「わーってる。でもさあ、こうやって使いに寄越すってことはうちら気に入られてるんじゃん?」
女はサンダルを引きずるように歩きながらコンビニに入る。
男はため息をつき、ミニバンを施錠した。
店内に入ると、入口付近で女が棒立ちしていた。
入店チャイムがしつこく鳴り、自動ドアが何度も開閉している。
「邪魔だろ。中入れよ」
女を小突くと、彼女は震える手で前方を指した。
指先をたどると、レジ台に佇む革ジャンの男がいた。
足元には、見覚えのある白スーツの男が血まみれで倒れている。
「……組長? 組長!」
男は駆け寄り、鬼頭を抱き起こす。
顔は血まみれで、眉間にはぽっかり穴が開いていた。
「うわっ」
男は鬼頭の死体から離れた。
レジの奥から呻き声が聞こえる。
よろよろ立ち上がって覗き込むと、血まみれで折り重なる男女が見えた。
男は恐るおそる、革ジャンの男を見上げる。
全部、この男が……?
下野は入店客にも気付かず、ぼうっと悦に入っていた。
やった……アニキ、俺……やりました……あとは自首するだけ……安全な刑務所に入って報復を逃れ……アニキらが片をつけてくれるまで、待つだけ……。
「おい、逃げるぞ!」
男は立ちすくむ女に怒鳴る。
その声で下野は我に返った。
拳銃を天井に向けて二発撃つ。
直撃した蛍光灯が割れ、女は悲鳴を上げた。
男は震える足で後ずさりする。
下野が店内に轟く声で叫んだ。
「警察を呼べ!」
END
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