Do NOT call the police!!

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「あの……」  震える手を上げたのは、人質店員の土佐だ。 「ここは穏便に済ませませんか。レジの中身も裏の金庫も、持っていってもらって構いません」  突然提示された好条件に、強盗男は「何を言ってる」と顔をしかめた。  土佐はおずおず答える。 「あなたもお金に困ってこんなことしたんでしょう? 警察に通報して大事になるのは望んでないはずだ」  土佐のこめかみを汗が伝う。  警察を呼ぶわけにはいかない。  万が一、店に現場検証が入ってロッカーのアレが見つかったら……。  下野は眉を寄せた。  あの店員、ナイフを突きつけられながら何を言っている。  だが都合がいい。  俺の懐にあるコイツが見つかるのは避けたい。  斉藤は土佐を舐めるように見て、目を細める。  あんたの魂胆はわかってる。  卑劣な男。どうやっても名誉を守りたいってわけね。  けれど都合がいい。  警察に来られでもしたら計画が水の泡。 「うるさい! いいから警察を呼べ!」  コンビニ強盗、後藤努は混乱していた。  こいつら、なぜ警察を呼ばない。  強盗の俺が通報しろと言ったら、普通は通報するだろ。  そもそも、どうして誰一人逃げない。  店員は俺に捕まってるし、レジ付近の杖をついた男が走れないのは分かる。  だが、雑誌売り場の男とATM前の女は俺の前を通らず店を出られる。  こっちは単独犯だし、拳銃なんて代物も持ってない。  走れば簡単に逃げ切れる。  それに、このコンビニ店員も。  要求してもない金を差し出しやがる。  こんなはずじゃ……こんなはずじゃなかったのに!
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