Do NOT call the police!!

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「みんな、俺のために……かたじけない」  後藤は目を潤ませ、頭を下げた。  同時にナイフを持った手が揺れ、土佐は冷やりとする。  彼は後藤を刺激しないよう、声を上ずらせながら言った。 「娘さん、きっと見つかりますよ」 「あんたもいいヤツだな」 「てことで、そろそろ解放……」 「いや、悪いが娘が見つかるまで付き合ってもらう」 「え?」  困惑する土佐とは対照に、後藤の意志は固い。 「娘が見つかるまで俺はここを動かない。情報が集まらなきゃ、やはり警察を呼んで世間に訴える」 「でも、そうしたら前科がついて……」 「世間が同情してくれれば養育権は失わない。むしろ誘拐犯の妻より心証が良いだろ」  理屈の通らない自信はどこから来るのか。  土佐は沈んだ眼で店内の時計を見た。  あと三十分もすればシフトの終わる時間だ。  ブツを渡して大金を手に入れ、そしたらこんな店、すぐに辞めてやるのに。  約束の相手はもう近くに来ているだろうか。  クソッ、こんな日に限って。警察沙汰なんて勘弁だ。  斉藤は返信を待つふりをして、思考をめぐらしていた。  警察を呼ばれる前に事を運ばねば。  強盗男は多少手荒に排除するとしても、問題はこの二人。  彼女は男性客二人を見た。  計画には邪魔になるし、罪のない一般人を巻き込むわけにはいかない。  彼女の視線を感じ、鬼頭は身構えた。  あの女、やたらこちらを観察してくる。  俺が誰だか知っているのか。  風俗に引き込んだ女か? いや、年齢的に合致しない。  まさか……潜入捜査官?  組のシノギの証拠を掴むつもりか?  だとすれば、車にあるのがバレたらまずい。
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