第五話 封印

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「…よし、これから本題に入るぞ。」  改まってヤマトが話し出したため、俺とレイは座りながらでもヤマトの目の前で真面目に聞くことにした。天井が低いのか、さすがの桐塚でも今回は腰をおろしている。 「ここは神を信仰する場所、拝殿だ。人々はここを訪ねに来る。本来ならば土足は厳禁なのだが、俺達はあくまでこの神と敵対する存在。よって、土足で来ている。」  理屈はよくわからないが、なんとなく言いたいことは伝わった。 「この拝殿の裏に本殿という建物がある。そこに神が住んでいる。今から桐塚が本殿へ行き神を封印する儀式を行う。いいか、くれぐれも本殿には近づくなよ。」  ヤマトに厳しく言いつけられる。なんだ、もう一つ俺が知らない建物があるのか。近づくなと言われれば気になってしまうんだけど…。 「桐塚だけが行くってどういうこと? 俺も本殿に行きたい!」  とりあえず、俺の気持ちをそのまま伝えてみることにした。したのだが、やはりヤマトにギロリと睨まれるだけで終わってしまう。 「神を封印するには様々な代償が伴う。その代償を支払えるのは、この中で桐塚しかいない。この意味がわかるな?」  正直言ってほとんど何も理解できていないが、ここで反論するのも面倒くさいので、素直に頷いてみせた。 「で、儀式って何をするんだ?」  レイが素朴な質問を投げかける。 「…まぁ、おびき寄せて、捕らえて、完全にこの世から消してやるんだ。あまり詳しくは伝えられない。」  微妙そうな表情のままヤマトは教えてくれた。対してレイは、ふーん、とだけ言って興味がなさそうである。 「とにかく、儀式を行う手順として、桐塚以外の俺達は寝なければならない。」 「寝る?」 「あぁそうだ。桐塚が動きやすいようにしなくてはいけない。」  理由は不明瞭だが、とにかく就寝すればいいということだけはわかった。桐塚がヤマト用の薄い毛布をリュックから取り出して床に敷き、ヤマトは何も言わずにそこへ寝転がった。なるほど、もう寝てもいいのか。俺も習ってヤマトの隣で寝転がる。 「いやいやいや、ハルは本当に順応性が高すぎるだろ! 寝ろと言われて、はい寝ます、って言う奴がいるか!」  俺とヤマトが大人しく寝ていたのにレイだけがいきなり喚き始める。それがなんともうざったいので、思わず睨みつけてしまった。 「くそ、お前もかよ…あーはいはい。寝れば良いんでしょ、寝れば。」  やけくそになったのか、ついにレイもその場に臥す。  目を瞑ってから、確かにいきなり寝るだなんて不可能だと気づく。しかしおかしなことに、ぽかぽかとした陽を浴びるとあくびの一つや二つは出てきてしまうものだった。  心地よい…ただ陽の暖かさに身を委ねている間に、いつの間にか寝てしまっていた。
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