第一話 変化

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「それでは、これからオリエンテーリングを始めます。他校の方も来られているので、行動するときは十分に気を配ること。いいね?」  いつもよりも丁寧に喋る学年主任が話して、そのまま班に分かれてオリエンテーリングというものをさせられることとなった。  今日は中々のハードスケジュールである。一時間目は今日の日程の確認で、一時間目は30分も絶たずに終わる。それから体操服に着替えさせられ、そのまま迎えの大型バスに乗る。それで謎の山奥へ連れてこられ、オリエンテーリングをして名物の食べ物を食べて半日で帰る、という事らしい。今日は購買を使う予定だったか、弁当なんて持ってきてねぇよ。つーか、こんなことをするなんて聞いてねぇ。…あー、いや、なんか話していたような気はするけど…興味なかったから知らない。というか結局、生徒指導室には行かなかったんだけど、本当に大丈夫なのかな。  辺りが騒がしくなりながら、それぞれ分かれて歩いていく。俺の班は、誰だっけ。  ぼーっとして突っ立っていると、肩をたたかれたので振り向いた。 「お、レイじゃん。ダニエルも。」 「何してんだよ、ハル。置いて行くぞ?」  どうやら、俺の班にはレイとダニエルが揃っているらしい。寄りにもよってバカな奴らとチームだなんて…、あ、そういえば、オリエンテーリングに興味がなかったから、メンバー決めは同級生に適当に決めてもらったんだっけ。 「…行かないの?」  ふと、後ろから優等生のユウが声をかけてきた。コイツはここの生徒の中では類い希なる人間で、珍しく髪を染めていない。そして無口で、でも学年二位の頭脳をもち、風紀員だ。 「早くしよう、一番にならなきゃ嫌。」  またも優等生のヒロが水を差す。コイツはどういう訳か分からないが、何もかも一位を取りたがる、頭のネジが外れた奴だ。勉強も一位、運動も一位、そして喧嘩も一位なので、誰もコイツとは関わり合いたくない。俺は別にそういうことは気にしないタイプだけど。 「よーし、行くか!」  俺はピクニック気分で歩き始める。隣にはヒロやユウ、レイが付いてきている。…あれ、一人足りなくないか? そう思って振り返ると、ダニエルは立ち止まったままであった。 「ダニエル?」  俺が声をかけると、ダニエルは口を空気で膨らませ、そっぽを向いた。どうやら拗ねているらしい。そういえばダニエルは、ヒロやユウを人一倍嫌っていたっけ。じゃあどうして同じ班にしたのか。いや、ダニエルみたく一番と二番を嫌う奴はたくさんいる。だからこそダニエルに押し付けられたのではないのか。それに、俺やレイはそういう事を気にしない人間だ。だから、班決めの時、ヒロやユウが俺達の班に入ってしまう確率が余計に高まってしまったのではないのか。 「拗ねてんじゃねぇぞ、ダニエル」 「チッ…うるせぇな…」  レイにも注意されたためか、ダニエルは重い足取りながらも俺達についてきた。そんなに嫌うほど、ヒロとユウってヤバい奴らなのか? 「行くよ、ユウ。こいつらになんか構ってられない。」  ヒロはユウの腕を引いて、強引に歩き出した。ダニエルはそれを見て顔を強ばらせる。レイは少し苦笑いしながらもダニエルの手を掴もうとしたが、ダニエルは払いのけた。 「ヒロー、ユウー! 待てよ! ダニエル、レイ、早く行こうぜ?」  俺がそう言ってダニエルの手を引っ張ると、ついに諦めたのか、軽く舌打ちをすると大人しくついてきた。ヒロとユウはというと、何とかユウがヒロを食い止めたようで、待っていてくれている。なんだ、良い奴じゃん。 「おっしゃ! 行くかー」  俺はダニエルを掴んでいない方の手でヒロの手を掴もうとすると、すぐに叩き落とされ、ギロリと鋭い目線で睨まれた。
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