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ブルームからよく見える信号の下で、あの日の事故は起きた。
桜のツボミがふくらみ始めていたのに、その夜は雪が降りそうなくらいに寒かった。
いつもはお父さんかお母さんのどちらかが、お家にいてくれた。でも時々、二人そろって夜の時間に、お仕事へ行かなければならないときもあった。
そんなときは、おばあちゃんの家でお泊まりをすることになっていて、6年前の3月27日もぼくはおばあちゃんの家にいたんだ――。
「ハルくん、お待たせ」
ゆかりちゃんの白い手がにゅーとのびてきて、いつもと同じホワホワと甘い湯気を上げたハニートーストが目の前に置かれる。
「どうぞ、めしあがれ」
「ありがとう。ゆかりちゃん」
いっぱい息を吸って、甘い香りをかいだ。
それからお皿の横に置かれたフォークとナイフを手に取って、パンにさしこむ。
まずは、はじっこのカリカリしたところを味わうって決めているんだ。
ナイフを入れると、パリパリパリ! と元気ないい音が返ってきた。
それを、溶け始めたバニラアイスクリームとハチミツの海にひたしてからほおばると、すぐに口いっぱいの幸せが広がる。
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