死神人生相談 はじめました。

8/19
83人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 ブルームからよく見える信号の下で、あの日の事故は起きた。  桜のツボミがふくらみ始めていたのに、その夜は雪が降りそうなくらいに寒かった。  いつもはお父さんかお母さんのどちらかが、お家にいてくれた。でも時々、二人そろって夜の時間に、お仕事へ行かなければならないときもあった。  そんなときは、おばあちゃんの家でお()まりをすることになっていて、6年前の3月27日もぼくはおばあちゃんの家にいたんだ――。 「ハルくん、お待たせ」  ゆかりちゃんの白い手がにゅーとのびてきて、いつもと同じホワホワと甘い湯気を上げたハニートーストが目の前に置かれる。 「どうぞ、めしあがれ」 「ありがとう。ゆかりちゃん」  いっぱい息を吸って、甘い香りをかいだ。  それからお皿の横に置かれたフォークとナイフを手に取って、パンにさしこむ。  まずは、はじっこのカリカリしたところを味わうって決めているんだ。  ナイフを入れると、パリパリパリ! と元気ないい音が返ってきた。  それを、()け始めたバニラアイスクリームとハチミツの海にひたしてからほおばると、すぐに口いっぱいの幸せが広がる。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!