83人が本棚に入れています
本棚に追加
――『死神人生相談 はじめました。』
初めてそれを見たとき、ピンときた。
ぼくのためにかけられた看板だって。
駅向こうの「ケヤキ商店街」にある中華料理屋さんでも、夏になると同じような看板がかかっているような気がするけど。
それにしても、死神が人生相談を始めるなんて、どう考えたってヘンテコだ。
だって、たいてい絵本の中の「死神」は、黒いマントに長いカマを持ってニヤリと不気味に笑ってさ、人間を天国や地獄に連れていこうと待ちぶせしている悪役なんだから。
でも、お母さんは言っていた。
小さな虫から大きなクジラまで、この世界から命をもらった者はみんな、生まれたときから命の長さが決まってるんだ、って。
生きる長さが砂時計の砂だとしたら、毎日命をけずって生きているんだから、一粒もムダにしないように大切にしなきゃね、って。
だから、36才で死んじゃったお父さんとお母さんの命の長さは、初めから決まっていたんだって、心に言い聞かせた。6年前の小学校1年生のときから。何度も。何度も。
お父さんとお母さんの命の長さを決めたのが死神じゃないのなら、そんなに悪いやつじゃないのかもって思ったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!