死神人生相談 はじめました。

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――『死神人生相談 はじめました。』  初めてそれを見たとき、ピンときた。  ぼくのためにかけられた看板だって。  駅向こうの「ケヤキ商店街」にある中華(ちゅうか)料理屋さんでも、夏になると同じような看板がかかっているような気がするけど。  それにしても、死神が人生相談を始めるなんて、どう考えたってヘンテコだ。  だって、たいてい絵本の中の「死神」は、黒いマントに長いカマを持ってニヤリと不気味に笑ってさ、人間を天国や地獄(じごく)に連れていこうと待ちぶせしている悪役なんだから。  でも、お母さんは言っていた。  小さな虫から大きなクジラまで、この世界から命をもらった者はみんな、生まれたときから命の長さが決まってるんだ、って。  生きる長さが砂時計の砂だとしたら、毎日命をけずって生きているんだから、一粒(ひとつぶ)もムダにしないように大切にしなきゃね、って。  だから、36才で死んじゃったお父さんとお母さんの命の長さは、初めから決まっていたんだって、心に言い聞かせた。6年前の小学校1年生のときから。何度も。何度も。  お父さんとお母さんの命の長さを決めたのが死神じゃないのなら、そんなに悪いやつじゃないのかもって思ったんだ。
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