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看板がかかっていたお店は、学校へ行く途中の坂にある。同じクラスのタカシくんの家の三軒先のところ。
赤い屋根と、赤ちゃいろのレンガのカベ。
それに木の看板と、木のドアのお店。
――『喫茶 ブルーム』
その漢字が「きっさ」って読むことも、ブルームは英語で「花が咲く」って意味だってことも、ぼくは知っている。
「ブルーム」で働いているゆかりちゃんに教えてもらったから。ゆかりちゃんは、お店にいつもいるお姉さん。
前に「お休みの日はないの?」ってきいたら「ここに住んでいるからね」って言ってたけど、それならこの店のおじさんと仲良くしているところを一度も見たことがないのは、どうしてだろう。
お店のとなりには、ぼくが2人いても手が回せないくらい太い桜の木があって、春になるとお店の前が花びらでピンク色になるから「ブルーム」って名前に決めたんだって。
毎年花が咲くと「少しの間でもドアを開けっぱなしにしていると、お店の床がピンク色に変わっちゃうの」って、ホウキで花びらをはきながらゆかりちゃんはうれしそうに笑ってたから、きっと桜が好きなんだろうな。
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