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ゆかりちゃんのその言葉に「うん」と返事をして、ぼくはいつもの席についた。
入口から一番奥のテーブルの席。
やっぱりここはホッとするから好き。
「君は幾つだ?」
声のする方を見たら、ななめ前のテーブルに座っていたおじいさんと目が合った。
知らない人が声をかけてきたら無視しなさいって、いつも先生が言ってる。でもブルームにいる人だから、悪い人じゃないよね。
まるでサンタクロースのような真っ白な髪の毛と長いヒゲ。お葬式みたいなスーツに、曲がった腰を支えるためのつえを持っている。
この店はコーヒーが人気なのに、その人のカップには黄色い紅茶が入っていた。
人をジロジロ見てはダメってお母さんが言っていたのを思い出して、目をそらす。
「12才。もうすぐ中学生」
「おお、そうか。卒業式は終わったかな」
「2日前にね。でもぼくは早く大人になりたいんだ」
「早く大人になってどうする。子どもにしか経験できないことも山ほどあるんだぞ。まずは子どもをやりきってからじゃないと」
「それじゃあ、間に合わないよ」
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