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「君が相談したいと思っているのは、忘れられない人のことだろう」
「どうして分かるの?」
「顔に大きく書いてある」
「何も言わないのにバレちゃうのはイヤだな」
「ごめん、ごめん」
「相談は2つあってね。1つ目は、お父さんとお母さんのこと。いなくなってから6年たったけど、一日も忘れることがないんだ。事故があった3月27日は、必ずブルームに来て思い出しているけど、いつか忘れちゃいそうで怖いんだ。どうしたらいい?」
「忘れることは決して怖いことでも悪いことでもない。当たり前のことだ」
「お父さんとお母さんが悲しまないかな」
「生きるとは忘れることでもある。新たな思いとともに生きていくんだ。それが成長だし、成長こそ生きている意味だ」
「そういうものかな」
「お母さんとお父さんは、君がいつまでも悲しい顔をしているのを望んでいると思うか」
「分からない⋯⋯」
「じゃあ、お父さんとお母さんが悲しい顔をしていても、君はいいのか?」
「それはイヤだよ。笑っていてほしいもん」
「ほら、そう思うだろ。きっと二人も同じ気持ちのはずだ」
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