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 ある日、とてつもなく強い吸血鬼と出会った。  そいつは家族の仇だった。 「お前が、父さんと母さんを殺したヤツ!」 「はん、いちいちそんな人間覚えてねぇな、食った人間の事なんてよお」  勇んで飛び出した俺は、ダッシュビーの忠告を聞かなかった。 「よせ! おまえじゃ勝てん!」  そしてすぐに、圧倒的な力量差を前にして、手も足もでなくなった。  俺は、殺してやると考えていたそいつに、敵わなかったのだ。  俺はこてんぱんにやられてしまった。 「へっ、弟子のしりぬぐいをしてやるのも師匠のつとめってな!」  けれど、師匠が助けてくれたから一命をとりとめる事ができた。  その後は、数か月かけて怪我をなおさなければならなかった。  けれど、俺は怖くなってしまった。  実力の差を知って、心が挫けてしまったのだ。  一生敵わない事が嫌なのではない。  敵わない可能性を受けいれてしまった事が嫌なのだ。 「俺の心は弱い。どうしようもなく弱い。こんなんじゃ、こんな弱い人間が勝てるわけはない」  けれど、そこを師匠が励ましてくれた。 「最初から無敵の存在などいない。みな強い人間の背中を追いかけて、自分も同じようになろうと思って、強くなるのだ」  師匠にだって弱い時があった。  ダッシュビーはその話をしてきた。  昔は俺の様に弱くて、たくさんの人を目の前でなくしたのだという。  その昔話を聞いた俺は、再び立ち上がる事ができた。
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