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いくつかの競技を終えて借り物競争が始まった。
「はぁ…」
と大きなため息が出る。憂鬱だ。
一緒に走る人数は10人くらい。放送委員の合図と共に走り出す。俺は特別速い訳じゃないから前から3、4番目。置いてある紙を拾い上げた。
「………、篠井先生。」
うちのクラスの担任、篠井智宏であった。少し無精髭生えてるけどイケメンなあの人。どこにいるのだろうか?まあ光に聞けばわかるか。さっきまで怒られてたしね。
「光」
「え”っ、俺!?いやあ好きな人とか言うお題引いちゃったあ?照れるなあ!!」
ガタッと嬉しそうに自分を指差して頭を掻きながら立ち上がる。
ごめんお前じゃない。
「いや篠井センセどこ」
「あ、篠井?あそこあそこ」
と指したのはテントが張ってある所の下。ほんとだ、いる。
「あんがと」
「えっそんだけ?!?!!」
お礼を言うと光は悲しそうにまた席に座る。俺はテントへと走っていった。わかりにくい所にいるなぁ
「せんせ、篠井先生」
「あ?なんだ」
普通の生徒だったら怖くて逃げてるカモ。イケおじだが風格が地味に怖いのだこの人は。
「お題で、来てください」
「なんだなんだ、好きな人でも当てたか」
そう言ってにやっと笑いながらこっちにだるだる来る。
「光と同じこと言ってますよ」
「前言撤回で」
二人で走りながら話す。てか篠井サンダルじゃなくてスニーカーで来いよ学校。
「ちょっと先生もっと速く走ってくださいよ」
「馬鹿野郎おま、俺が本気出したらお前のことおいてっちゃうだろ?」
そんなこと言ってるが普通にちょっと疲れてそうな篠井先生。
「疲れてるだけでしょ」
「カッチーン如月あとで職員室でーす」
とかふざけながらゴールへ行った。地面に座って待たされる。持ってきた物や連れてきた人は全員がゴールしてから確認される。一応今は3位だから前の人が脱落してくれたら嬉しい。
「…先生なんで腰浮かして座ってるんですか」
「汚したくないから」
何言ってんのこいつ、と俺は少し怪訝な顔をしてしまった。
「そんな無精髭生やしといて何を今更。座って座って」
俺は無理矢理尻をつかせようと篠井が膝の上で組んでいる腕を下にぐいぐいやる。
「ちょ、ちょやめ!、てか無精髭じゃないから!おしゃれだから!」
なんて少し苦しい事を言う。それにしてもこいつなかなか尻をつかない。
「先生しぶといですね…」
「うっせえな、やめろよ」
とばっと手を振り払われた為、仕方なくやめてあげることにした。先生ヤンキー座りしてる。コワーイ。
「先生ってそーいえば何歳でしたっけ?」
「19」
「苦しいですよ」
俺がそう言って眉を顰めれば篠井はだるそうに答える。
「うるせ、27だよ27」
「へえ、案外若い」
「あ"?じじいに見えるって言いたいのか?」
「やだなイケオジって言いたいんですよ」
「結局じじいじゃねえか」
なんて会話をしてたら皆ゴールしたようで確認が終わった。結局俺は3位だった。前の人脱落してくれなかったかー…、まあ、悪い順位じゃないし、クラスには貢献したよ、多分。それに俺のせいじゃなくて足が遅かった篠井のせい。
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