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「はぁ……湊くん…」
「あの、そろそろ雪の所に行かせて貰えないですかね」
俺は3度目の言葉を健さんに言う。
『少し抱きしめさせて貰っていいかな...?』と健さんが恥ずかしがりながら言ったから『いいですよ』と手を広げた結果がこれだ。
「もう少し…」
「この前もそれ言って15分くらい引き伸ばされたのでこれで」
俺は身を捩って無理矢理健さんから離れた。
「今度はお父さんも呼んできて?」
「何する気ですか…父が可哀想ですよ?」
べつあの父ならどうなってもいいけど。て言うかどこが好きなんだあれの。
「やややゃや、やめっやめてよ!!」
と顔を真っ赤にしている健さん。何を妄想したんだか。洋子さんはニコニコしてるし。
「っ!!湊!!!!」
後ろから急に大きな声がした。雪の声だ。
「ゆ、きっ…、!?」
ぱっと振り返れば、急に抱きつかれて体勢を崩しそうになり、身を引いてしまう。でもこの感覚が久しぶりで落ち着く。背が高いせいで、背中を丸めないと俺の肩に顔を埋められない雪の感覚だ。落ち着く。
「っちょ、服の中に手入れないで…」
「湊っ、みなと…」
興奮した様に首元にキスして、べろりと舐めてくる。
「ちょっ、と落ち着け。駄犬じゃないでしょ?」
俺が冷めた調子で言えば離れて両手を握ってくる。
「ご、めん…興奮、しちゃった…」
そう言って幻覚の犬耳がへなっと下がる。
「いーよ、許す。ところで眠いんだけど、今日はもう良い?」
「一緒、寝よ」
雪は笑って俺の手を引っ張ってくる。
「雪いいなぁ…」
後ろから健さんの声がした気がしたが無視した。反応してちゃキリがない。
雪の部屋について俺はベッドの枕に顔を埋めた。
「湊…来てく、れて…あり、がと」
「ん。相手の子感じなの」
俺は雪に背を向けてスマホをいじりながら聞く。そんな俺を雪は抱き込んでいる。
「あの子、メイド、とかに態度きついし…」
あー自分が神様だと思ってる人かな。
「うるさい、し…髪、もじゃもじゃ…眼鏡分厚い…」
…………………ん、ぉ?この特徴どっかで。
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