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家具は備え付けのクローゼット。
そして寝心地の良さそうなシングルベッドに壁際に置かれた黒くつややかな木製の机。
机とお揃いの椅子にはクッション部分に深紅の手ざわりが良さそうな布が貼られている。
のんびりできそうなシングルソファーと小さなテーブル。
テレビに、さらに嬉しい事に猫足の可愛らしいドレッサーまであった。
正に、至れり尽くせりである。
「こんな部屋、私が使っちゃって良いんでしょうか? そもそも、ここ、ゲストルームなんですよね」
興奮している菊子とは対照的に、日向は冷めた目をしている。
「ああ。ここは元々、住み込みの家政婦の部屋として使っていたから。ゲストルームはあと一部屋あるし、家には泊まり込む客も滅多にいないし問題無い」
「そうなんですか」
菊子に言われても、日向は無言で頷くだけだった。
日向の冷めた様子を見ていたら、菊子の興奮も治まって来た。
「隣のゲストルームは大体同じ感じだから見なくても良いよな」
日向は限りなく棒読みに近い感じでそう言う。
「……はい」
菊子が頷くと、日向は「後、残りはシャワールームだけだ。行くよ」そう言って一人で先に部屋を出てしまった。
「はい……」
眉間に皺が寄るのを我慢して菊子は日向の後に続く。
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