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そんなの楽勝よ。
誰が、目黒さん何かに恋するものですか。
菊子は、ガッツポーズを取ると、インターフォンを力強く押した。
「はい」
インターフォンから雨の声がした。
「目黒さん、野宮です」
菊子はインターフォンに顔を近づけた。
すると、雨が「菊子、顔が近いよ。モニターでアップで見えてるから」と笑い声交じりに言った。
菊子は顔を赤くして慌ててインターフォンから顔を遠ざける。
インターフォンから雨の、くくくっ、と言う笑い声が漏れて来て、悔しい気持ちになる菊子。
「もうっ! 笑わないでもらえます?」
「ははっ、鍵は開いてるから入って来な」
「分かりました」
菊子は、ふくれっ面で門を開けると、家まで伸びる短いコンクリートの道を大股で歩き、玄関まで向かう。
玄関扉は大きな木製の引き戸の扉だった。
縦長にはめ込まれた白い磨りガラスが扉の中心にはめ込まれている。
菊子は鉄製の黒いドアノブに手を掛け、扉を引いた。
扉は気持ちよく、すっと開いた。
「いらっしゃい、菊子」
家の中では車椅子に乗った雨が菊子を待ち構えていた。
しかし、菊子の目に、雨は映らない。
菊子は家の中を、きょろきょろと見回していた。
「な、何だか凄い家ですね」
菊子から、今日何度目かの、ため息が漏れた。
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