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「何でと申されましても、あのですね。えーっと……何となく」
まさか、あなたの態度からそう感じましたとは言えずに菊子はお茶を濁した。
日向は、いらいらした表情を浮かべて眉間に人差し指と中指を当てた。
やばい、怒らせたかしら。
菊子は身構えた。
「あんたの言う通り、俺はあんたの事、迷惑に思ってるよ」
そう静かに言う日向。
てっきり怒鳴られると思った菊子は面喰ってしまう。
しかし、日向は菊子の顔を、いらついた顔のままに見ている。
不機嫌なのは間違えなかった。
だが、だからと言ってご機嫌取りに走る菊子ではない。
「それは何故でしょう?」
平静を装い訊ねる菊子。
そんな菊子に、日向は冷たい口調でこう言った。
「野宮菊子。あんたの話は、あにきからよく聞いてたよ。愉快な女友達がいるってね」
愉快な女友達。
雨にそんな風に言われていたのかと菊子は心の中で苦笑いする。
「愉快な女友達がいけませんか?」
「友達、ねぇ……。あんた、あにきに対して友情なんか抱いてるのか」
「それは、どういう意味でしょう?」
菊子の問いに、日向は少し間を開けてから答える。
「何か、目的があってあにきに近付いたんじゃないの? て意味だよ」
「あら、それは、どんな目的かしら?」
二人の間に冷えた空気が漂う。
「あんたの前の家政婦……」
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