捨てる神あれば拾う神あり

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捨てる神あれば拾う神あり

「ああ、これからどう生活していけばいいのかしら困ったわ」  退職金は出たし、当面の生活には困らないが、これから就職先を探さなければならない事を考えたら菊子は憂鬱だった。  菊子にとって、面接は地獄だ。  今までの仕事も、何件も面接をしてやっと採用されたのだ。  またそれをやり通すだけの自信が菊子には全く無かった。 「菊子なら、直ぐに次の働き先が見つかるだろう」  雨はシャンパンを傾けながら言う。  そんな雨を菊子は憎々し気に細い目で見る。 「無責任な事言わないで下さい。今までの会社に入るまで、大変だったの知ってるくせに」  会社の採用が中々決まらずに、菊子は雨にも大分相談をした。  やっと前の会社に就職が決まった時は雨が盛大にお祝いしてくれたものだった。  まさかその事を忘れたのではあるまいか、と、拗ねた顔をする菊子。 「ああ、そうだったな。なぁ、菊子、ならさ、家で家政婦として働かないか?」  突然の提案に菊子は目を見開いた。 「何を冗談を言ってるんですか?」 「冗談なんかじゃないよ。家で雇っていた家政婦がこの間辞めてな。それで困ってたんだ。菊子さえ良かったら、次の仕事が見つかるまでどう?」 「え、え、ええ。それは凄く助かりますが」 「住み込みになるけど、大丈夫か?」 「や、家賃は?」 「いらないよ」 「うーむ、どうしよう」  とっても美味しい話だ。  しかし、友達の家の家政婦になるというのはいかがなものか。
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