空を見る

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 ピーンポーン  “間もなく…”“お出口は左側です…。”  電車内のアナウンスが聞こえ、パチリと目を覚ます。  え、もうすぐ、駅に着くじゃん!よかった…目が覚めて。  スーツ姿の私は、慌てて鞄をかけ、席を離れた。出口になるドアの前にたった瞬間、降りる駅に止まる。  プシュー  ドアが開き、私は電車を降りる。  ブーブー  それと同時に鞄の中からスマホのバイブレーションが鳴った。  なんだろう。立ち止まり、鞄からスマホを取り出し、開く。  通知欄には、一週間前に面接を受けた会社からメールが来たと書いていた。  ドクン…ドクン…  心臓の音が徐々に大きくなり、鼓動も早くなる。  恐る恐るこのメールを開く。  どうか…お願い、早くこれを終わらせて。  願いながら、メールの本文をゆっくり読んだ。  『先日は弊社の採用にご応募くださり、ありがとうございます。厳正なる選考させて頂いた結果、残念ながら…。』  途中まで読んでいると、自然と目に涙を浮かべていた。  ああ…またお祈りメールだ…。これで何十通目なんだろ。  友達はもう受かっているのに。  しかも、多分サークル内でも私だけだよ。今日も企業の説明会に行ったのは。  スマホを閉じ、鞄の中にしまった後、重い足取りのまま改札を通る。  駅の目と鼻の先にある横断歩道に向かう。  ブオーン  車が走る音が聞こえる、信号を確認すると赤だった。  ふと、信号機から空が見えた。  薄い水色の空に、雲がオレンジ色に照らされている。  光っている先を見ると、炎のように燃える鮮明に明るい夕日が見えた。  真上を見渡してみる。  灰色に橙色がついた雲と暗くとも広く青い空が辺り全体に広がっていった。  ああ…なんて、鮮やかで綺麗なんだろう…。  今まで見たことがない美しい光景を見渡しているうちに、私の苦しみがどんどん小さくなっていく。  それと同時に、闇のように暗く深かった私の胸の中にほんのりと火が宿っていった。  それを感じていると、不意に私の手がガサゴソと鞄の中を探っている。  あ、見つけた。  私はスマホを開くと、すぐにカメラアプリを起動した。  そして、このどこまでも広がってゆく空をパシャリと撮った。これから、どんな困難にぶち当たっても、これに比べたらちっぽけで大したことがない、絶対に乗り越えることができるからという思いを込めながら。      
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