声、咲き誇る場所へ

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 後ろを振り返る一ノ瀬さんと、時折目が合った。  他愛のないアイコンタクト。一ノ瀬さんがふっと口元を緩めたので、文歌もつられて笑いかけた。そんな偶然が何回か重なった。  しかし2年生になる頃には、一ノ瀬さんを取り巻く世界がうっすらと分かってきた。  先生のいない所で、一部の男子がいらぬちょっかいをかけていて、喋らない彼女の反応を面白がっているのだ。  ピンポンダッシュのように机を叩いたり、変顔をして笑わせようとしたり。  そんな時、一ノ瀬さんは声を荒げる代わりに、拳を振り上げて男子を追い散らしていた。  彼女は悪くないのに、面白がる人たちが繰り返す。悪循環だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加