声、咲き誇る場所へ

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 一ノ瀬さんに気安く声をかけて嫌われたくない。  けれど、このままじゃいつまでたっても距離なんて縮まらないよ。  桜舞う中、文歌に近づいてきた一ノ瀬さんに、ランが無邪気にじゃれついた。  彼女は目を細め、足元のランに手を伸ばし、頭を撫でてくれた。  見慣れたボブカットはピンクのインナーカラーが入っている。美容師のための専門学校に行くのだと、風の噂で聞いていた。  よかった。一ノ瀬さんは窮屈な世界から抜け出し、自分を表現できる居場所と方法を、ちゃんと見つけられたのだ。  文歌はほっとして自然な笑みが零れた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加