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「困っとんねん」
「ようわかった」
呆れ、取り敢えずそう返す。
「冷たいなぁ、レン」
「別に俺は冷たないです。で、内容を言いや、内容を」
エイタは缶を開けて口をつけると、上目遣いにレンを見た。
「やってもてん」
「何を」
「ウワキ」
それなりに申し訳なさそうに彼は言う。しかし、レンは首を傾げる。
「エイちゃんとテリちゃんとこって、それ公認やろ? いっつもやん」
「んー、そうなんやけどね」
ヴォーカルのテリーとエイタの関係は、見ていて呆れる程にオープンだ。いや、オープンにも限度がある。付き合って随分長いようだが、浮気はいつでも当たり前。最終的に互いの元へ戻るのがわかっているから良いらしい。
「これがまたヤバくてさぁ」
「ビョーキ持ちでもひっかけたか」
「シッツレイな。オトコ付きや」
「へー? ボコにされた?」
「……まぁ、さぁ、とにかくオンナ連れて映画行ったわけよ」
「エイちゃんの割りに手堅いねぇ」
「ちょっと控え目にせんならんワケがあるんよ」
彼のどこにそんな理性があっただろうかと思いつつ、取り敢えず黙っておく。
「……ほんでな、外出たらばったり会ってもてん」
「テリちゃん」
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