霊感体質からの卒業

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『丑三つ堂 霊感があり過ぎて困っている方、治療で治ります! ご気軽にご相談下さい』  怪しげな看板を下げた店が、よく行くカフェの隣でひっそりとオープンしていた。 「いらっしゃいませ!」  いつの間にか雑談程度には話すようになった店員の安藤に、隣の店のことを聞いてみる。 「さあ。私たちスタッフはあまり聞かされてなくて。店長の知り合いの店らしいんですけどね」  安藤が声をひそめて言う。 「へえ」 「ま、私は霊感なんて全くないんで、関係ないんですけどね」 「そうですよね」  私は合わせるように笑って、彼女が下がってからボソリと目の前の彼に向かって言う。 「空いてる席、他にもあるでしょ?」  私の前に座ってにやにやしている男の霊に、周りに聞こえない声で話しかける。もちろん、悪霊とは目も合わせないし、ましてや声なんか絶対にかけない。男の霊は肩をすくめて窓際で競馬新聞を読んでいる男の側に移って行った。単純に寂しがりやなのかもしれない。 「お待たせ致しました。ベーコンとエリンギのバター醤油スパゲティーとセットのスープです」
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