霊感体質からの卒業

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 店員が私のテーブルにスパゲティーの皿を乗せようとした時、後ろで「ぎゃっ」と野太い悲鳴と、食器が落ちた音がした。店内のざわめきが一瞬静まり返る。 「お客様、如何なさいましたか?」  店員が私のスパゲティーをトレイごとテーブルに置いて、競馬新聞を読んでいた男に駆け寄る。携帯ラジオを床に投げつけた時に、側のコーヒーカップも一緒に落としてしまったらしい。別の店員も加わり、床に落ちたコップとコーヒーを素早く片付けていく。 「あの、大丈夫ですか?」 「だっ、大丈夫です。すみませんでした」  男の客はそそくさと会計をして出て行ってしまった。 「何をしたの?」  男の霊がふわふわと飛んできて、自分の両耳を塞ぐふりをした。 「耳?」  男の霊は『うらめしや〜』と口を動かした。私は見えるだけで、声までは聞こえない。 「悪趣味ね」  ラジオに自分の声を流して、それを聞いた男が怯える姿を見て喜んでいるらしい。 「ご飯が不味くなる」  私はリュックから、ここに来る前に寄った神社のご神水を取り出す。男の霊は不可解そうに私の水筒を見ている。こんなのは、ただの時間稼ぎなのは分かっていた。 「でも、邪魔よ」
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