霊感体質からの卒業

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「やはり、カフェで顔を合わせましたか。何だかひどく弱って戻って来たんですよ。彼は元々この場所にあったレストランで起きた火事で亡くなったんですよ。まあ、いわゆる事故物件というやつで、なかなか買い手がつかなくて私の所に話が」 「はあ」 「まあ、どうぞお座りになって下さい。私、小向恵三と言います。二階が耳鼻科になっていまして、そちらで医師をやっています」 「え、耳鼻科ですか? 気づきませんでした」 「そうでしょうね。発注した丑三つ堂の看板が、えらくデカく仕上がってきて、本業の耳鼻科は閑古鳥……。おっと、それは置いといてと。霊感を治せるというか、鈍らせる、と言った方が正しいのですが。あなたは霊感を無くしたいと思いますか?」 「は? そりゃあ、無くしたいと思いますけど、方法なんてあるんですか?」 「治療は簡単です。鼻の粘膜を焼くんです」 「はあ? 花粉症の治療みたいですけど」 「ええ。そうです」  至って真面目に言う小向からは、詐欺師のような匂いはしなかった。 「嗅覚が鋭すぎる人は、些細な空気の違いや、霊の感情をキャッチしやすいんですよ。現にあなた、男の霊を視る前に鼻を触りましたよね?」
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