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【01】 発覚と選択
「宮地梨子を呼んで」
私の言葉に、目の前にいる男――赤坂翔也が、明らかに動揺してみせる。
ホワイトデーの、デートの最中の出来事だった。
「だ、誰だよそれ」
「知らないなんて言わせないよ?早く呼んでよ」
狼狽え、グラスを握る手が小刻みに震えている。
そんな翔也に冷ややかな眼差しを送りながら、私は口を開いた。
「呼べよ。こっちは全部知ってんだから」
怒りを滲ませても、翔也はまだ隠し通せると思っているのか、「何のこと」なんて言う。
「梨子がSNSでツーショット載せてんのも、デートって周りに言ってるのも知ってる。やり取りを写真撮ったのもあるけど、見せようか?」
「よ、呼びます。呼ばせてください」
私がまくしたてると、彼は隠すのを諦め、潔くスマホで、梨子を呼び出す文面のメッセージを送信した。
十数分後、私がその場にいるとは知らない宮地梨子が、モダンなカフェの店内に姿を現す。
「こっち」
翔也が手を上げると、入り口付近でキョロキョロしていた梨子が気づいて、浮足立ったステップで近づいてきた。
「今日は仕事なんじゃなかったの?急に呼び出して――えっ?」
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