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梨子の言葉に私はもちろんだけど、翔也も驚いたようで、「えっ」と素っ頓狂な声を上げる。
何であなたが驚くの。と私は翔也に冷ややかな眼差しを向けた。
「私の方が先に付き合っていて、婚約もしてるんだけど」
「でも、後で出会った私を好いてくれてるってことは、お姉ちゃんより私の方が好きってことだよね」
梨子はそう言って、翔也の腕に抱きつく。
嫌なものを見せられて、私は目を逸らした。
「違う!俺は…」
「声、大きい。ここお店だから」
梨子を振り払わない翔也に苛立って、私は冷たい声で遮る。
――ああ、私はまだどこかで期待してるんだ。
翔也は私にしか本気じゃないって。これはただの過ちだって。
「俺は、彩香のことが本気で好きなんだ。…梨子とは遊びなんだ」
「酷い!」
遊びだと言われて、梨子が目に涙を浮かべる。
「彩香、ごめん。軽い気持ちで遊びに走ってしまって。もうしない。だから、許して」
翔也が、テーブルに額をつけるほど頭を下げた。
その隣で梨子が、「別れたくない」と繰り返し言う。
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