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毎週、土曜出勤だからと、土曜日は連絡がつかなかった。
仕事してるんだと信じて疑わなかったのに、これから先、その言葉を――ううん、翔也の言うこと全て、私は信じていけるのかな。
◆◆◆
夕方、私が住むアパートに、翔也が訪ねてきた。
「彩香、ごめん。ツラい思いさせてホントにごめん」
翔也はひとりだった。
私は、ひとまず翔也を室内に招き入れた。
「謝罪はいいよ。どれだけ謝られても、すぐに許せるようなことじゃない。それよりも、梨子との話し合いはどうなったの」
聞くのが怖い。それでも、聞かなければいけない。
私の質問に、翔也は一言「別れたよ」と言った。
「え?」
「別れた。最初はごねてたけど、説得を続けて、別れるってことで合意してもらった」
…別れた…。私は何も言えず、ただ翔也の顔を見つめる。
「互いの連絡先も消してある。金輪際、こんなことしないって約束する。すぐには信じられないかもしれないけど、信じてほしい」
信じられなければ、別れてくれていい。
誠意を示すために、一緒に暮らしたい。
そんな翔也の言葉を、私は受け入れていた。
漠然と、翔也と別れたら私は結婚できない気がして、別れるという選択をできなかった。
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