第1章 放課後、熱く求められて。

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 オイオイオイオイ。来てるねぇ波が。押し寄せてるねえ。いいのかね、俺だけこんなにツイてて。  うのきちゃんとヒョロガリくんは、俺を置いて生徒会室を発っていく。カラリと控えめな音を立てて引き戸が締まると、部屋の中は俺と珠樹さんの二人きりとなる。  こんなのもうカーニバルだろ。いま俺の心の中では、リオデジャネイロの人々が踊りまくっちゃってる。一方で、頭は冷静じゃないといけないのも分かっている。気品だけはクラシックの本場の……どこだ? ロンドン? パリ? 音楽は詳しくないから知らん。まあとにかくヨーロッパらへんの人々がオープンテラスで優雅に紅茶をすするような感じで立ち居振る舞う。 「ごめんね、残らせちゃって。二人きりじゃないと聞けないことなの」  珠樹さんはお腹の前でもじもじと手を動かしながら、伏し目がちに話を切り出す。さっきまでの凛とした感じはなくなって、どこか恥ずかしそうにすら見えた。そのギャップに心撃ち抜かれ、一瞬リオのカーニバルが飛び出しそうになる。慌ててヨーロッパの美しい石畳の風景を思い浮かべながら、『はあ、なんスか』と平静を取り繕う。 「あの……あした土曜日だけど、何か予定入ってる?」 「明日っすか? 何もないスけど」 「あ、そうなんだ……もしよかったら、お出かけしない? 一緒に来てほしいところがあるの」  待ってくれ、リオの人たち。ステイ。ステイだ。まだ飛び出すには早い。もしかしたら学校の備品の買い出しとかかもしれないだろ。重たいもの持たされたりするのかもしれないぞ。ここまでうまい話があるわけないんだって。  モルダウの水面を必死に思い浮かべながら、興奮を抑え込んでいく。その清き流れのお陰で幾分かの冷静さを取り戻した俺は、いちばん大事な部分を確認しておくことにする。 「あの……それは、生徒会のお手伝いですか?」 「ううん、違う。完全なプライベートのお誘いよ」
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