第1章 放課後、熱く求められて。

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 あっダメだ。リオの人たちが勝っちゃった。オープンカフェがシュラスコ屋さんになっちゃった。石畳の上でパレード始まっちゃった。モルダウじゃなくてよく見たらグアナバラ湾だったみたいだ。  もうこうなったら、俺もサンバのリズムに乗るしかない。ズンドコズンドコ暴れ回る心臓の鼓動に従って、一気に珠樹さんに歩み寄る。それこそ、互いの息が掛かるくらいの距離まで。 「ご一緒します。どこへでもお連れください。珠樹さんとならブラジルまででもお供します」 「そんな張り切られても困るんだけど……でも、嬉しい。じゃあ明日の朝10時、学校の正門の前で待ち合わせしましょう」 「明日と言わず、今からでも良いですよ。一緒にサンバを踊りませんか」 「今からはダメだよ、もうすぐ桜が帰ってきちゃうから……明日じっくり、ね」  そうだった。珠樹さん、このあと予定あるんだった。まあ俺としては桜さんも交えて南米の熱狂に身を委ねてもいいと思ったけど、楽しみは先に取っておくことにしよう。  そうこうしているうちに、桜さんが職員室から帰ってきた。珠樹さんと桜さんが戸締りを確認して帰るので、俺はひと足先に生徒会室を出るように命じられた。  玄関まで出たところで、AINE(アイン)のメッセージが届いた。先ほ友達登録したばかりの珠樹さんからだった。 『動きやすい服装で来てね。私、アクティブな遊びが好きなの』  良いでしょう。朝から夜まで、アクティブに参ろうじゃありませんか。  校門を出て土手を登る。多摩川がいつもよりもキラキラ輝いて見えた気がした。朝は幼馴染にぶん殴られた道、今の俺はスキップしながら帰る。頬っぺたの痛みはすっかり吹っ飛んで消えていた。
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