第2章 こんなの、ハジメテ。

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「に、似合いますか? どうですか?」  珠樹さんにユニホームのシャツだけ着せてもらったうのきちゃん。すっかりハシャいじゃって、ベンチ前はファッションショーの様相を呈している。ひらりと身を翻したり、裾を摘まんでみたりするうのきちゃんの姿を、珠樹さんが慈母のような目で見ている。  その隣で同じユニフォームを着て、俺はすっかり不貞腐れていた。うのきちゃんとヒョロガリくんはシャツだけなのに、なぜか俺にだけズボンから帽子から、全て用意されていた。二度と着ることはないだろうと思っていたユニフォーム一式に強制的に着替えさせられて、嬉しいわけがない。なぜか俺のシャツだけ臭いという問題も加わって、気分は最悪だ。 「ごめんね~。男性LLサイズって、あんまり使わないのよ~。棚の一番奥に入ってて、カビ臭くなっちゃったみたいね~」  すっかりむくれていたら、石鹸の香りが鼻をくすぐった。俺の左隣に桜さんがやってきたのである。  よっしゃあ深呼吸だって一瞬だけ思ったけど、すぐに止めた。背後からもの凄く冷たい視線を感じたからである。無言の圧力に負けた俺は、『はは……まあ……』と濁した返事を返すことしか出来なかった。  桜さんはベンチの上に、国宝級のお尻をちょこんと載せた。彼女もまた、すっかり野球のユニフォーム姿。あえてタイトなサイズを着こなし、持ち前のお尻と脚のラインがすらっと出ている。  桜さんの顔を見て話すふりをしながら、チラチラと眼球を動かして尻と腿を鑑賞する。これを見るなって方が無理でしょ。きょう一日で流し見のスキルがメッチャ上がりそうだな。 「悪いわね~、無理やり来てもらっちゃって。今日に限ってメンバー全然集まらなくって~」  強引な珠樹さんと違って、桜さんはまだ感謝の意を見せてくれていた。キチンと帽子を取って頭を下げてくれれば、俺だって悪い気はしない。  ……それに……ほら……後ろで、お兄さんがメッチャ見てくるから……怒るわけにもいかないッス……痛い痛い、視線が痛い……。  視線に思いっきり刺されて、冷や汗しか出てこない。俺は唯一持ってきた汗拭きタオルで顔をゴシゴシ拭いながら、小声で本心を吐き出した。 「……まさか、野原さんすらグルだとは思いませんでしたよ」
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