第1章 放課後、熱く求められて。

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「6対4で女子の方が多いからだよ。それ以外に無ぇ」  これ以上同じことを聞かれるのが野暮ったくて、とうとう俺は正直に話した。すぐに背後から、『はぁ?』なんて可愛げの欠片もない返答があった。察しの悪いタコさんに、優しい俺はきちんと解説を加えてやる。 「5対5だとライバルが多すぎる。かといって7割も女子がいたら、男子の肩身が狭くなる。6対4で女子優勢っていうのは、俺にとっては黄金比なんだよ」  進学案内には、たいてい男女別の在校生の総数が掲載されている。俺はそれを過去10年分まで遡って徹底的に調査した。  そもそも男女が黄金比でない学校を除外し、男女比の変動が激しい学校も除外し、新しい授業課程の設立などで先行きが不透明な学校も除外し……  様々な条件を勘案した結果、残ったのが土手高だったのである。商業高校なので基本的には女子人気が強くなるが、スポーツの強い土手高なら男子もある程度入ってくる。結果、過去10年間ずっと6対4で女子優勢の黄金比を保ち続けていたのだ。  まさか自宅から最も近い高校が最良の条件を整えているとは思わなかった。神様は俺のことを相当気に入っているらしい。結果的にうるさい幼馴染も付いてくることにはなったが……まあ、ささいな問題だ。  この理想郷で、女の子とイチャイチャ遊びまくりの薔薇色スクールライフを満喫する。誰に何を言われても、俺の決意は揺らがない。20ほど足りなかった偏差値をひっくり返して合格したあたりに、俺の覚悟が見て取れるといったものだろう。 「……バカみたい」  ところがこの女は、必死になって青春を謳歌しようとしている俺をたった一言で否定しやがった。バカって言った方がバカなんだぞバーカバーカ。お前なんか犬のウンコ踏んじゃえ。
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