33人が本棚に入れています
本棚に追加
「珠樹さん!」
引き戸と格闘する珠樹さんを、後ろから強引に引き寄せる。生徒会室を出ていかないように、俺の目の前から消えないように、珠樹さんの身体を抱きかかえた。
「ちょっと!? なにすんのよ!」
珠樹さんは抵抗した。俺の腕を掴んで、俺の制服が破れんばかりに引っ張ってくる。でも力だったら俺の方が上だ。身じろぎのひとつだってさせまいと腕に力をこめる。
俺の目の前から勝手に消えるなんて許さない。絶対に離さない。離してやるもんか!
「ズルいよ! 珠樹さん、そんなのズルい!」
「ズルいって、何がよ!?」
「俺の青春をメチャクチャにしておいて! アンタら無しではいられなくして! それでいきなり宙ぶらりんにするなんて! おかしいよ、そんなの」
「だから、それはゴメンって――」
「チームが無くなったら、うのきちゃんと古志くんはどこに帰ってくればいいんですか」
「それは」
「草野球が無くなったら、佑蒲さんは何を生きがいにして生きるんですか」
「渡」
「頼むから、チームを無くすなんて言わないでください。俺たちから生きがいを奪わないでください」
「離して」
「イヤです」
「お願いだから」
「イヤです」
喉のあたりでつかえてたモノが一気に出てきた。口から出しきれない、言葉にできないぶんが、目からも鼻からも出てきた。それでも全部は出し切れなくて、出せば出すほど湧いてきて、止まらなかった。・
溢れ出たモノを全部珠樹さんに投げつけた。珠樹さんのパーカーが俺の色んなのでびしょ濡れになるのも構わず、しがみついて、なすり付けた。
最初のコメントを投稿しよう!