第18話 あなたを抱きしめて、そして春を待って。

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「珠樹さん!」  引き戸と格闘する珠樹さんを、後ろから強引に引き寄せる。生徒会室を出ていかないように、俺の目の前から消えないように、珠樹さんの身体を抱きかかえた。 「ちょっと!? なにすんのよ!」  珠樹さんは抵抗した。俺の腕を掴んで、俺の制服が破れんばかりに引っ張ってくる。でも力だったら俺の方が上だ。身じろぎのひとつだってさせまいと腕に力をこめる。  俺の目の前から勝手に消えるなんて許さない。絶対に離さない。離してやるもんか! 「ズルいよ! 珠樹さん、そんなのズルい!」 「ズルいって、何がよ!?」 「俺の青春をメチャクチャにしておいて! アンタら無しではいられなくして! それでいきなり宙ぶらりんにするなんて! おかしいよ、そんなの」 「だから、それはゴメンって――」 「チームが無くなったら、うのきちゃんと古志くんはどこに帰ってくればいいんですか」 「それは」 「草野球が無くなったら、佑蒲さんは何を生きがいにして生きるんですか」 「渡」 「頼むから、チームを無くすなんて言わないでください。俺たちから生きがいを奪わないでください」 「離して」 「イヤです」 「お願いだから」 「イヤです」  喉のあたりでつかえてたモノが一気に出てきた。口から出しきれない、言葉にできないぶんが、目からも鼻からも出てきた。それでも全部は出し切れなくて、出せば出すほど湧いてきて、止まらなかった。・  溢れ出たモノを全部珠樹さんに投げつけた。珠樹さんのパーカーが俺の色んなのでびしょ濡れになるのも構わず、しがみついて、なすり付けた。
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