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「私と一緒にいたらロクなこと起きないよ」
「もう慣れました」
「毎週末ビンタで叩き起こされるんだよ」
「ヘルメット被って寝ます」
「他のチームの助っ人にだって駆り出すからね」
「拒否権ないのも知ってます」
「……この間みたいなトラブルも起きるよ。いいの?」
「その時は、今度こそ俺がみんなを守ります」
珠樹さんの目尻が潤うのが見えた。普段は雄弁に語る口が力なく震えてた。筋の通った鼻が、ぐすん、と音を立てる。
脆い表情を見せたのは一瞬のことだった。頭をふらりと揺らし――俺の胸に額を預けて、顔を隠した。
「じゃあ、私は……私は、まだ。みんなのことを、好きでいて良いの?」
俺は答えなかった。ただ、緩めていた腕をもう一度、珠樹さんの肩に回した。今度は痛くしないように気を付けた。でも絶対に離さんという気合いは込めた。
いつのまにか珠樹さんの手も俺の背中に回ってた。普段他人に背中なんて触らせないからビックリしたけど、あったかくて心地いい。
そっか、背中を触られると安心するのか。俺も珠樹さんの背中をそっと触ってみる。時おり鼻を啜り、震えた息を吐く珠樹さんの背中を撫でてあげた。
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