第18話 あなたを抱きしめて、そして春を待って。

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 ズドドドドドと音を立てて、目の前の引き戸がひとりでに開いた。間近で聞いたらあんまりうるさ過ぎた。心臓が一瞬宙に浮いた。珠樹さんの肩も跳ねた。 「あ゛っ……ごめんなさい! すみません!」  向こうに見えたのは蓮沼くんだった。抱き合ってる俺らを見て顔を真っ赤にした蓮沼くんは、すぐさま引き戸を閉めようとした。あんまり慌てたのか上手く閉められず、引き戸に手を滑らせた。勢い余って、持ってたスマホが廊下に吹っ飛んでいった。  『あ゛ーっ!』という蓮沼くんの悲鳴を聞きながら……俺たちは冷静になった。普通に考えてみたら、なんて小っ恥ずかしい体勢でいたんだろうか。それも、いつ誰が入ってくるかわからない生徒会室で。  おずおずとお互いに手を引く。とりあえずお互いに見つめ合ったあと……笑い合うしかなかった。珠樹さんの頬がみるみる赤く染まっていった。たぶん、俺も同じくらい顔が赤いんだろう。頬が熱くて仕方がない。  でも、珠樹さんはさすがの強さだった。すぐに身を翻して動くと、『だいじょぶー?』と廊下の蓮沼くんに声を掛けてた。『大丈夫じゃないです! 色々と!』と、蓮沼くんの素っ頓狂な声が返ってくる。  俺は手近な椅子……普段は来客用の椅子に腰掛けた。燃えるように熱い頬を両手で覆ってみると、じっとりと濡れてるような気がした。落ち着こうと思って息を大きく吐く、その息すら火傷しそうなくらい熱く感じた。
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