第18話 あなたを抱きしめて、そして春を待って。

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※  後日に珠樹さんと桜さんが話し合った結果、今年はオフシーズンに試合を行なわないと決まった。うのきちゃん達がいないとつまらないってのもあるし、単純に人数も減っている。半分近く助っ人で埋めて試合をするくらいなら、佑蒲さんとうのきちゃん達の帰りを待ったほうがいいという判断だ。  代わりに土、日のどちらかにチーム内の練習会を開くこととなった。グラウンドでノックとかをする時もあれば、紀田さんのバッティングセンターに行く時もある。欠けているメンバーがいつでも戻ってこれるように、活動だけは維持し続けた。  俺はうのきちゃん、ヒョロガリくんに練習会の日程を送り続けた。チームのAINEグループが稼働してるから、改めて俺が連絡しなくても平気ではある。それでも二人には俺の手で伝えたかったんだ。既読スルーが続いても、めげずに連絡し続けた。チームのことだけじゃなくて、生徒会のこと、学校生活のこと、何でもメッセージを送り続けた。  雪ともしっかり仲直りした。『ごめんね』『いいよ』は済んでいたけど、なんとなく気まずさが残ったままだった。部活が無い日に雪を生徒会室に呼び出して、お互いにわだかまってた部分をキチンと口に出した。  雪だって大事な仲間だって思ってることをキチンと伝え、雪も俺とずっと友達で居たいって言ってくれた。互いに支え合いながらうのきちゃん達を待とうと誓い合った。なお、この時も蓮沼くんは途中でズドドドドドと引き戸を開けてしまった。また慌てて閉めようとして、また閉め損ねた。今度は飲み物をふっ飛ばしてた。  2月の中旬になると、佑蒲さんも退院してきた。さらにしばらくしてギブスも外れた。  佑蒲さんにとっての特効薬は、やっぱり野球だった。練習会に復帰してボールを捕ったり投げたりしているうちに、ちょっとずつ元気になっていった。まだまだ寒くて痛むときもあるそうだけど、春にはまた全開で動けるようになるだろう。  そして2月末。とうとう待ちに待った瞬間が訪れた。  チームのAINEグループ。珠樹さんが『3月頭にお誘いを受けたから、人数が揃うなら練習試合組みます。どうかな?』と書き込んだら――うのきちゃんとヒョロガリくんが久しぶりに返信をした。 「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。3月からは参加したいです」
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