第18話 あなたを抱きしめて、そして春を待って。

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「学校も休みがちになったり、連絡も返せなくなったり……色々と申し訳ありません。それどころじゃなかったんです。いただいたメッセージはすべて読んでいましたが、返せる余裕が無くて」  もう一度、深々と頭を下げるうのきちゃんとヒョロガリくん。当然、ふたりを責める人間なんて誰も居ない。  うのきちゃんの家は普通の家じゃない。『それ 野原に聞いてみよ~♪』でおなじみの証券会社とか、一等地に高級マンションや商業施設を次々オープンする不動産会社とか、いくつもの大企業を束ねる大財閥だ。  一人娘のうのきちゃんは、いずれグループを継ぐ存在。ヒョロガリくんも、このままうのきちゃんの側にいるならそれなりの役職に就くのだろう。土手高OBである10代目社長(うのきちゃんのちちおや)の影響を受けて土手高に入学してるだけで、本来は俺たちなんかお近づきにもなれないはずの存在なんだ。  でも今や、うのきちゃんも、ヒョロガリくんも、俺たちの大切な仲間だ。立場が違っても、どんな困難な事情があっても、必ず帰ってきてくれると信じていた。  そして、うのきちゃん達も闘い抜いた。それぞれ人相が変わるほどの努力を乗り越え……気が遠くなるような厳しい条件をくぐり抜けた。俺たちが信じた二人のままで居てくれた。
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