第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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「そういや雅くん、土手高97期生のチームは結局どうなったの?」  水曜日。いつも通り、俺のバイト先のジムにカチコミに来た野球ハイエナwithお兄様方。今日も元気にフリーウェイトエリアに居座りながら、傍若無人な大声で会話している……クソ空いてるからいいけどさ。 「ダメだ、代わりの相手が見つからねぇ。日曜のナイターなんてそうそう応募なんか来ねえよ。……ったく、初試合の相手がドタキャンなんて。ツイてねえよなぁ」  バーベルにガッションガッション重りを付けながら、珠樹さんの問いに答える雅さん。今日のベンチプレスは70キロでセット組むんですね。頑張ってくださいね。俺は110キロでセット組めるけど。  今日は腕、肩の日と決めてる野球ハイエナふたり。ダンベルをわっせわっせと運びながら『ほーん』と気のない返事を返してた。そのダンベル、さっき俺が丹念に拭いたばかりなんですよ。実質手を繋いだようなもんなんで、後で胸触らせてくださいよ。そんなに変わらないと思いますよ。  しかし、そんな下ネタを口に出す暇も与えないのが野球ハイエナだ。珠樹さんは10キロのダンベルを床に放り投げたあと(良い子は真似しないでね)、ダンベルが落ちる音にも負けない衝撃的な提案をし始めたのだ。 「もうさ、私たちで9人集めて相手しようか。急造チームだから歯応えないかもしれないけど、試合できないよりマシでしょ」
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