第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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「大師球場よ? しかもナイターよ? これを逃す手は無いと思ったのよね」 「ドタキャンした相手もバカよね~、あんな綺麗な球場で出来るチャンスを逃すなんてね~」  くず餅をクッチャクッチャモッチャモッチャと食いながらハイテンションの野球ハイエナふたり。きな粉をこぼし過ぎなんですよ。車のシートが真っ白けなんですよ。佑蒲さんが悲しそうな目で見てますよ。  立派な球場で出来るってことで、珠樹さんと桜さんはテンション上がりっぱなしだった。16時集合って話だったのに、14時にウチに押しかけて来やがった。で、案の定早く着き過ぎた。  やることもないんで、ユニフォーム姿のまま川崎大師をブラブラ見て回った。そして名物のくず餅を、お店のおばちゃんがドン引きするくらい買いまくって、今に至る。  上品な甘さのお餅を下品に食いまくる野球ハイエナを見たら、最近のハードスケジュールの真相も理解できた。やっぱり、単に野球しまくりたかっただけじゃねえか。申し込みが殺到したなんて建前じゃねえか。やっぱり野球ハイエナに隙を与えてはならないんだな。  だいぶ振り回されてプンスコプンだったけど、佑蒲さんが俺の分のくず餅もたくさん買ってくれたから許した。お餅がモチモチ。黒蜜もおいちぃ。ついでに母さんと、塾で来れなかったうのきちゃんとヒョロガリくん、バイト中の雪のぶんも買ってもらった。餅だけにもちろん。なんつって。  舌鼓を打ってたら、俺のスマホがペョって鳴いた。蓮沼くんがチームのAINEグループにメッセージを入れていた。用事を片付けてから来るので、現地集合ってことになってた。  『着きました!』の文面とともに写真が送られてきた。写っていたのは大師球場……と、川崎大師名物・くず餅の写真。しかも、かなりいっぱい買ってるっぽい。  うーん、くず餅パーティー開幕やな。俺は隣の席に積んである、蓮沼くん用のくず餅を見た。『アイツもいっぱい食うからな』と、佑蒲さんが3人前も買ったヤツだった。
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