第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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※  結局、雅さんのご友人が姿を見せたのはさらに10分くらい後。車2台に分乗してきたみたいで、ゾロゾロと一気にやって来た。残念ながら、まだ着替えすら済んでない。  集団が見えた途端、冷や汗まみれだった雅さんがたまらず駆け寄っていく。 「遅えよ、バカ! 早めに着いとけって言ったろ」 「ごめんごめん、道も駐車場も混んでてさぁ」 「だからそれも伝えただろ? 1時間以上前に着くつもりでちょうど良いんだって」  さすが雅さん。予定より何時間も早く人の家に押し掛け、さんざん早く支度しろとけしかけたあげく川崎大師でも観光しないと時間を潰せないくらい早く着きすぎる人間が言うと説得力が違う。首謀者はもちろん野球ハイエナ2匹とはいえ、それに同意したのはお兄さま達だからな。  でも、考えてみればまだ良い方だ。草野球人を見渡してみると、もっとヤバいヤツがワンサカ見つかる。  試合開始時間に集合するヤツとか。  駐車場から直接守備位置に就くヤツとか。  着替えが間に合わないからってスーツのまま打席に立つヤツとか。  毎週末ごとに諸先輩がたに起こしに来させる俺みたいなヤツとか。  悪い大人の見本市と言われても何も言い返せない草野球界において、試合20分前に到着するのはかなり優秀と言える。
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