第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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※  グラウンドに入れる時間になり、管理人から『入っていいよ〜』の声が掛かる。草野球人たちが列をなし、グラウンドに『チワッ』と挨拶をしながら次々とグラウンド入り。野球人の皆さまいわく、門の前で一礼すればグラウンドを大切にしたことになるらしい。俺がグラウンドの神様だったら『ンなわけあるか』と言いたくなる。  基本的にはグラウンドを確保した側のチームが1塁側ベンチ。今日もその原則に則り、土手高OBが1塁側へ、俺たちは3塁側へベンチ入りとなった。  すでに準備万端の3塁側ベンチは、ベンチに荷物を置いたらすぐにキャッチボールを始める。それに対し、いま着替えが終わったばかりの1塁側は、慌ただしくスパイクに履き替え、グラブを出し、ドタバタとグラウンドに出てくる。  キャッチボールを始めてしまえば、さすがに野球部出身。慣れた様子で、無難にボールのやり取りが出来ている。投げ方も捕り方も、まあまあできる部類だ。草野球なんて、コチャチャチャッとした投げ方のやつとか、ドンガラガッシャンとした捕り方のやつがワンサカいるからな。  しかし、『草野球にしてはなかなか出来る』というのは、彼らからしたら褒め言葉にはならないかもしれない。  なぜなら――彼らはいちおう、強豪(諸説あり)と言われる、土手高野球部の出身なのだから。
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