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「あーっ、届かん!」
キャッチボールの距離が離れ始めたところで、少しずつボロが出始めた。ボールが垂れたり、引っ掛けたりすっぽ抜けたり。捕る方はなんとかなってるけど、投げる方のミスが目立つ。
さっきから聞いてりゃ、『肩が回らん』とか『手首が硬え』とか、そういう嘆き節ばかりだ。その言葉を裏付けるように、ボールには力が乗ってない。雑な回転が掛かっていて、失速するような感じ。
まあ、そんな鈍った身体で全盛期と同じスローイングが出来ると思ってる方がアホだわな。蓮沼くんを見習いなさい。ブランクもほとんどなく、かつ未だにまったく心配ないくらい鍛えてるくせに、髪の毛一本まで神経が通ったような丁寧なキャッチボールをしてるでしょうが。
優れた技術は、恵まれた肉体の上に乗る。特に投げる技術は、捕るよりも身体能力に依存する部分が大きい。肩周りの筋力や可動域がちょっとでも衰えれば、キャッチボールはズタボロになっていくんだ。
まあ、俺はもっと別の問題を心配してるんだけどね。思うように投げられないことよりも、もっと重要な問題。
やっと身体が温まってきたな~なんて思い始めた頃に、珠樹さんが『そろそろ始めよっか~』なんて言い出した。焦らせるなよ野球ハイエナめって思ったけど、時計を見たらもう18時40分。とっくに試合開始予定時間になっていた。むしろ野球ハイエナにしては我慢したほうだった。エロいエロい。間違えた偉い偉い。
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