第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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 武藤さんレフト前タイムリー。柴犬1号(いのうさん)が左中間ツーベース、武藤さん好走塁で生還。柴犬2号(よこおさん)がライト前ヒット、山田さんレフトへ犠牲フライ。  先頭打者から2人が初球、残る3人も1ストライクからのスイング。そりゃ、投げる球のほとんどが真ん中に寄ってきてたら、ガンガン打たれるわな。ましてや、こっちは草野球に慣れてる。2時間の中でできるだけ試合を進めるべく、打てる球は初球から打っていく連中なんだから。  あまりにガッツンガッツン打たれるもんだから、ピッチャー羽田さんの声もどんどんデカくなっていく。でもデカい声を出して投球が良くなるなんて、そんな虫のいい話があるわけもなく。むしろリキんで投げてるから細かなコントロールも失われ、どんどん真ん中に寄ってくるという悪循環。思いっきり投げたら全部真ん中に来ちゃうんだよな。  そして、バッター井川さんの時……恐れてた事態が起こる。 「ゔっ」  1ボールからの2球目。羽田さんの声が変わった。低く、くぐもったような声。掛け声というより、うめき声だ。  投球は大きくすっぽ抜けて、左打者の井川さんの外角へ。雅さんが最初から捕ることを諦めて後ろに走り出すほどの大暴投だ。  1塁ランナーの柴犬2号、悠々2塁へ。大量点差のなか、バッテリーエラーでさらに傷口が広がった。
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