第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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 バッターボックスからピッチャーを見ると、顔が真っ青だった。汗の量も一気に増えた、脂汗かな? 一時的に肩が痺れただけであることを祈ったけど、重症かもしれない。  こりゃダメだ。ストライクゾーンに来たら、内野ゴロを打ってやろう。三塁ベースを踏んで投げるだけのサードゴロがいいかな。遅すぎず、でも捕れるくらいの打球スピードで。  ダメだった。そもそも羽田さんが限界を迎えていた。  大きくすっぽ抜けた投球は、俺の身体目掛けて飛んでくる。あぁ、ストライクゾーンに投げる力も残ってなかったのか。  1歩だけ後ずさりして避けながら、投球に対して背を向ける。少し待ったら、渡くんのプリティなお尻にポコンと当たった。5歳児の肩叩きくらいの威力。  ベンチから野球ハイエナ2匹が、『ケツで当たらないでよ、汚いわねぇ』『あのボール、もう使いたくないわね〜』とヤジってくる。おかしいな。味方のはずなんだけどな。俺のお尻は汚くないですよ。毎日化粧水と乳液で保湿してるんですよ。尻も磨けば光る時代ですからね。  まあ、俺の尻の状態はどうでもいい。もっと心配しなきゃいけない人がいる。
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