第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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 キャッチャー雅さんが、SIMPLE3000シリーズ THE 棒読みって感じで『悪い悪い』と形だけの謝罪をしてくる。一滴も感情というものを感じさせない顔してる雅さんに、ひとこと忠告する。 「たぶんピッチャーの人、肩を痛めましたよ」 「え゛!?」 「替えないとヤバいと思います」  雅さんは血相変えてタイムを取ると、バタバタとマウンドに駆けていく。しばらく話し合った後に、羽田さんがマウンドを降りた。右肩を押さえながらベンチに向かう羽田さんの姿は、痛々しくて仕方がない。  まあ、ドンマイだな。事前に練習するなり筋トレするなりして、備えてから試合に臨むべきだったんだ。たかが草野球だったとしても……いや、草野球だからこそ、きちんと準備すべきだったんだ。趣味で怪我して生活に支障をきたすなんて、バカバカしいもんな。  とりあえずピッチャー代わりそうだからいいか……と思いながら見守ってたら、『早く一塁に行きなさいよ』って珠樹さんにケツを蹴られた。デッドボールの5千倍くらい強い衝撃だった。俺はケツをさすり、泣きながら右打席を出た。
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