第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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 大師球場の内野フェンスは、上半分が金網、下半分はコンクリート。ファーストはそこにモロに衝突してしまった。  スピードを落とさないで突っ込んだぶん、身体が一瞬宙に浮くくらい強く跳ね返った。そして、背中から地面に叩き付けられる。  幸い意識を失うようなことはなかった。でも足をバタバタと動かしてもがいている。顔を押さえる手からは、鮮血もほとばしっていた。  あーあ……プレーの勘が衰えるって、こういうことだ。フェンスまでの距離を目視するのを怠ったり、捕れる捕れないの判断だったり。気持ちより、身体能力より、まずこういう判断能力や集中力から落ちていく。昔取った杵柄だけではどうにもならないどころか、むしろ危険なんだよ。 「このバカ! 追うなって言っただろ!」  ピッチャーの雅さんが真っ先に駆け寄る。他のメンバーも続々と容体を確認しにやってくる。最後に、桜さんがいつもは俺たちのチームで使っている救急箱を持ってきた。  でも、救急箱くらいじゃどうにもならなさそうな状態だった。上唇が真ん中から縦にパックリと裂けている。顔面からフェンスに突っ込んで、金網で切ったらしい。  タオルで止血を試みるけど上手くいかない。どんどんタオルが赤く染まるばかりで、傷口からはどんどん鮮血が溢れてくる。
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