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大師球場の内野フェンスは、上半分が金網、下半分はコンクリート。ファーストはそこにモロに衝突してしまった。
スピードを落とさないで突っ込んだぶん、身体が一瞬宙に浮くくらい強く跳ね返った。そして、背中から地面に叩き付けられる。
幸い意識を失うようなことはなかった。でも足をバタバタと動かしてもがいている。顔を押さえる手からは、鮮血もほとばしっていた。
あーあ……プレーの勘が衰えるって、こういうことだ。フェンスまでの距離を目視するのを怠ったり、捕れる捕れないの判断だったり。気持ちより、身体能力より、まずこういう判断能力や集中力から落ちていく。昔取った杵柄だけではどうにもならないどころか、むしろ危険なんだよ。
「このバカ! 追うなって言っただろ!」
ピッチャーの雅さんが真っ先に駆け寄る。他のメンバーも続々と容体を確認しにやってくる。最後に、桜さんがいつもは俺たちのチームで使っている救急箱を持ってきた。
でも、救急箱くらいじゃどうにもならなさそうな状態だった。上唇が真ん中から縦にパックリと裂けている。顔面からフェンスに突っ込んで、金網で切ったらしい。
タオルで止血を試みるけど上手くいかない。どんどんタオルが赤く染まるばかりで、傷口からはどんどん鮮血が溢れてくる。
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