第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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 でも、ひとつだけ問題が残ってしまった。 「悪い。誰かひとり、貸してくれねえか」  救急車のサイレンが聞こえなくなったころ。雅さんがバツの悪そうな顔で珠樹さんにお願いをし始めた。ひとり搬送されて、羽田さんも病院に行ってしまった。これで.Echo97の人数が8人になってしまったのだ。  ここで試合を打ち切るという判断もあった。でも球場の使用時間は1時間弱も残ってる。こっちのチームも、あっちこっちから大量の助っ人さんに来ていただいている。こんな後味の悪さで終わりたくはないし、終わったところで何もすることなく帰るだけになるし……せめて、時間いっぱい野球をするしかないって状況なのだ。  珠樹さんはメンバーを一瞥したあと――俺の肩をポンと叩いた。 「行ってらっしゃい」 「なんで俺なんスか」 「なんとなく」 「やぁだ♡ やぁだ♡ 離れたくない♡」 「グーで殴る」 「すみません」  俺はすごすごと荷物をまとめて、1塁側ベンチに移った。
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