第19話 想いだけでは、どうにもならなくて。

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「まぁまぁ、これで少しは運動しないとダメだなって感じたでしょうし……次はもっと慎重にプレーできますよ」  俺の隣には、帰りは送ってもらえることになった蓮沼くん。佑蒲さんが買いすぎたくず餅を膝の上で大事そうに抱えている。  そういや、蓮沼くんは久々の野球でも無茶しなかったな。初めての草野球の日はそっとキャッチボールして、じっくり感触を確かめてたっけ。自分の身体とキチンと向き合えるのは偉いね。そりゃ上手くなるワケだ。俺ほどじゃないけど。  そう。自分の身体と向き合うことが大事なのだ。四十肩、五十肩と死ぬまで付き合う人も、全く運動なんてしたことないズブの素人も、それなりにキチンと野球経験を積んできた人も、一堂に会するのが草野球だ。  草野球には、正しい身体の動かし方とか、適正な運動量なんてない。個人差が激しすぎるから。そして、それを指導してくれる人もいない。自分の身を守れるのは自分だけ、ということになる。  だからこそ無理をしない。痛いなら痛いと、疲れたなら疲れたと言う。怪我しそうなくらいなら、最初から打球を追わなくたっていい。  怪我したのに無理を押して投げる必要もないし、フェンスにぶつかる必要もない。身体より大事なアウトなんて無いし、命より大事な勝利なんて無いんだから。
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